介護や農業支える外国人、識者「日本社会は外国人材なしに成り立たない」…人口減で「共生」の時代到来

[共生のかたち]<1>

 在留外国人は過去最多を更新し続けており、日本人が外国人とともに暮らす時代が本格的に到来した。貴重な労働力として期待される一方、一部の不法行為などを受けてSNSでは排外主義的な主張も広がる。分断ではなく、共生の道がどこにあるのかを探る。食事の介助をするブドドさん(左から2人目)。技能実習生らが傍らで見守る(石川県能登町で)

 「ゆっくりのみ込みましょうね」

 石川県能登町の特別養護老人ホーム「こすもす」。フィリピン出身の介護職、ブドド・マリー・ジョイスさん(34)が入所男性に日本語で優しく語りかけながら、スプーンでおかゆを口に運ぶ。その様子を、経験が浅い技能実習生ら3人が傍らで見守った。

 ホームの運営法人は、2021年からフィリピンとミャンマーの人材の受け入れを始めた。24年1月の能登半島地震や同9月の豪雨で地元従業員が被災し、この2年で約30人が離職。地元で求人を出しても集まらない一方で、両国の人材は増え続け、現在は介護職のほぼ半数の26人を占める。法人の紙谷靖博理事長は「人手不足は死活問題。外国人材は業務を維持するのに不可欠だ」と強調する。

 外国人職員たちはホームそばの寮で暮らし、施設側も外部講師を呼んで日本語を学ぶ機会を設けたり、買い出しのため車を出したりして生活を支える。ブドドさんも「待遇も良いし、先輩が親切に指導してくれるので、とても働きやすい」とほほえむ。

 厚生労働省によると、23年度の全国の介護従事者は212万人で、前年度から初めて減少に転じた。高齢化の進展で40年度には272万人が必要と見込まれるも、57万人が不足すると推計される。

 訪問介護に従事できる外国人材について、25年4月から即戦力となる在留資格「特定技能」も追加されたことを受け、各地で介護施設を運営する「シーユーシー」(東京)は同11月から外国人約50人の受け入れを始めた。担当者は「需要に人手が追いついていない。外国人の活用はさらに広がるはずだ」と指摘する。

 人口減に悩む日本の労働力不足は深刻化し、24年の生産年齢人口(15~64歳)は7372万人と、ピークの1995年から1300万人以上も減少した。東京商工リサーチによると、25年1~11月の人手不足を理由とした企業倒産は359件と、24年1年間の292件を上回って過去最多を更新。各産業とも穴を埋めるように外国人材の活用を急ぐ。荷物を搬入する福山通運のベトナム人技能実習生たち(昨年12月15日、広島県福山市で)

 トラック運転手の不足を見据え、福山通運(広島)はベトナムで人材を確保、育成する事業に乗り出し、現地で日本語や交通ルールなどを学んだ15人が25年から同社で技能実習生として働き始めた。運転手への移行を目指し、荷物搬入作業に従事するマイ・ファム・ソン・ズイさん(20)は「早く仕事を覚えて運転手になりたい」と意気込む。

 現地の送り出し機関のフィン・トロン・ヒエン会長(48)は15人が時間に厳格な日本社会になじめるようアラームで時間管理することや、色分けしたゴミ箱を使って日本のゴミ分別の仕組みを指導したといい、「同僚と良い関係を築いてほしい」と期待する。

 24年は多くの府県で外国人の転出が転入を上回ったが、東京都や神奈川県などは転入が大幅に超過。高給を求めて都心部へ移る人が増えたとみられ、特定地域への偏在も生じつつある。

 地方で人材難が厳しさを増す中、鳥取県は25年度、農繁期に合わせて外国人材に移動してもらうモデル事業に着手。夏場に農閑期となる長崎で働く外国人8人を、鳥取特産のラッキョウなどを収穫する夏~秋に受け入れた。鳥取県の担当者は「通年雇用しなくてもよい利点もあり、継続を検討している」と話す。

 法政大の山田久教授(労働経済学)は「日本社会は外国人材なしに成り立たないのが現実だ。社会不安が広がらない程度に受け入れペースを制御しながら、彼らが安定した生活を送れるよう雇用や環境の整備を進めることが『共生』のために必要だ」と指摘する。

シェアはこちら
  • URLをコピーしました!